2015年12月24日木曜日

2015-12-25 美人社長になった元スーパーモデルのポリーナ・レイゴロドスカヤ



ポリーナ・レイゴロドスカヤ

ワンデルー(Wanderu)社創業者兼CEO。同社(2012年創業)は、米国内のバス、列車のルート、料金を検索するための旅行系ウェッブサイトを運営。かつて著名なファッションモデルとしても活躍。マサチューセッツ州バブソン大学卒。経営学専攻。同大学は起業家教育に特化し、高い評価を得ている。


1.   あなたは、ロシアから米国に移住し、ワンデルー(Wanderu)社を起業する前は、著名なモデルとしても活躍されました。あなたのことをもっと知りたいので、生い立ちなどもう少し教えてもらえますか。

私は5歳のとき、ロシアのサンクト=ペテルブルクから家族とともに米国に移ってきた。私は、マサチューセッツで育った。大学入学前は、ファッションモデルとして働いた。モデル時代は、ニューヨークのトップモデルエージェンシーの「メジャーモデル」に所属していた。大きな広告キャンペーンやファッション・ウィークのランウェイ(舞台)に出演していた。しかし、モデルのキャリアを継続する代わりに、マサチューセッツ州ウェルズリーにあるバブソン大学に入学することを決断した。

私は、最初の会社を大学2年のときに起業した。その会社は、当初、ファッションショーを主催していた。私の経歴や人脈を生かし、デザイナーのエージェント業務につながっていった。大学3年生のときには、「ビジネス・ウィーク誌」の「25歳未満のトップ起業家」の一人に選出された。大学を卒業後、ニューヨークに戻り、「ポリーナ・ファッション」という名称のPR会社(広告会社)の経営を続けた。ファッション、美容、ラグジュアリー(贅沢)に焦点を絞って、その会社を6年間経営した。100を超えるイベントを米国中で主催し、ファッション・ウィークでは、ショーを企画した。「Shigoto」という日本のブランドを含め、多様なデザイナーと一緒に仕事をした。「Shigoto」というブランドは、オランダ人のデザイナーによって実際には立ち上げられた。彼は、日本に住んだときに、工事現場の作業パンツからインスピレーションを得た。彼のブランドは、パンツスタイルが中心となっている。

PR会社を運営しながら、私は、ボストンからニューヨークまでバスでよく出張した。バスの移動は、便利でコストも安い。さらに、バスではWiFiも使えて移動オフィスとして活用できる。しかし、バスの予約はとても不便だ。主要都市を経由するルートがいろいろあるため、時間、料金、バスの便を探すために、ときには10個ものウェッブサイトをチェックしなければならなかった。こうした個人的な経験が、ワンデルー(Wanderu)を設立する主な動機になった。ワンデルーは、北アメリカを対象に、電車やバスの移動の予約や旅程を単純化するウェッブサービスだ。当社は現在、米国とカナダのグレイハウンド、メガバス、ボルトバスなどの大規模なバス会社と提携している。近いうちに、メキシコにもサービスを拡張する計画だ。



2.   国立公園と森林の保全を啓蒙するためにGreen XCのキャンペーンで移動していたときでした。突然、相乗りをキャンセルされ、バスの停留所を探そうとしてできなかったとき、隠れた需要があることに、あなたと共同創業者のイゴール・A・ブラトニコフ(Igor A. Bratnikov)は気づきました。そうしたニーズに潜在的な利益が隠れていて、それをビジネスに発展させることができると、どのように検証しましたか。ビジネスプランを発展させ検証し、実際にワンデルー社を創業するにあたって、どのようなプロセスをとったのか、教えてください。

実際には、現在、他の2人の共同創業者と一緒にワンデルーを経営している。イゴールは最初の共同創業者だった。国立公園と森林の保全の啓蒙のためにキャンペーンを実施しているときに、ワンデルーのアイデアが生まれた。私たちは、アウトドア活動に、プロフェッショナルな職業をもつ、より多くの若者に参加してもらうという目標のもとに集まった若手プロフェッショナルの集団だった。国内の各地域を巡っていたとき、バージニア州で立ち往生してしまった。というのは、移動のための相乗りが突然キャンセルされたからだ。

次の目的地まで行くバスか電車を探そうとしたが、見つけられなかった。その経験が転機となり、私はワンデルーをスタートした。イゴールは、そのキャンペーン旅行に同行していて、彼のことを以前からよく知っていた。私と彼は、米国内にあるロシア系数学学校に通っていて、同じ友人サークルに属していた。そこに、3人目の共同創業者、エディ・ウォングが加わった。彼の役割は、CTO(最高技術責任者)だった。私とイゴールは、ボストンの起業家グループを通じて、エディと知り合った。彼は、ソフトウェア技術の立役者であり、ワンデルーを現実のビジネスに発展させるためのシステム開発を支援してくれた。

ビジネスのコンセプトを確認するため、いくつかの手段を講じた。まず市場調査を実施し、航空機よりもバスで移動する人間が多いことを確認した。2012年でいえば、米国では飛行機での移動が7.3億人に対して約7.5億人がバスで移動していた。くわえて、多くのバス移動者が「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代前半に生まれた世代。「ジェネレーションY」とも呼ばれる)に属することを知った。彼らの年齢は、18歳から35歳にあたる。彼らは「オンライン」世代で、日常生活の一部としてインターネットを利用している。彼らはボタンをクリックすれば、知りたいことのすべてを見つけ出すことができることを期待する。そして、やりたいことを迅速に済ますことをサポートしてくれるスマートフォンなどの携帯通信機器への依存度が高い。ミレニアル世代はインターネットとともに成長してきたので、この世代は自分たちの生活のスピードについていけないテクノロジーに対して忍耐力を持たない。つまり、こうしたデータは、「頻繁にバスで移動する人間のニーズ」と「彼らがチケットを買うためにとる手続き」の2つの要素が切断されていることを明らかにしている。

こうした仮説に到達したのち、私たちが検討しているサービスを利用するか否かを見極めるために、潜在的なユーザーを対象にして調査を行い、直接意見を訊いた。私たちは、ウェッブサイトにアクセスするユーザーが最初に訪問するランディングページを立ち上げ、当社のサービスを説明し、希望者にはベータ版(サンプル版)の利用を登録する機会を提供した。

当社のサイトを多くの友人と共有するようにユーザーを促すために、一種のゲームを提供した。ユーザーが当社のサイトを友人とシェアすればするほど、ベータ版のサービス開始時に最初の利用者として当社に選抜される確率が高くなるという仕組みだった。その結果、サービス開始前には、正式なマーケティングや広告を実施しなかったが、何万人もの潜在的なユーザーがワンデルーのベータ版に登録してくれた。この結果だけでも、当社のサービスに対して十分な需要があることが明らかだった。しかし、私たちは、さらにクリック課金広告サービスのグーグル・アドワーズを利用して、ユーザーにワンデルーに登録してもらうためにどのくらいのコストが必要かを確認した。クチコミやローカル版(地域版)の雑誌でのPRも、当社の宣伝には効果があった。

ワンデルーは、ユーザーに対していかなる利用料金も課していない。ユーザーは、最も安いチケットを検索し、その価格で予約することが可能だ。当社は、バス会社などの提携会社から取引手数料を受け取っている。



3.   ワンデルー社の事業規模と事業範囲を教えてください。社員は何名いますか。年間売上高はどの程度ですか。利益はどのくらいですか。

私と2名の共同創業者にくわえて、現在、18名の社員がいる。ベンチャーキャピタルからちょうど2回目の資金調達を完了したところだ。調達額は、560万ドル(5.6億円)強だ。チームの規模を拡大するため積極的に採用を行っている。20138月にサービスを開始して以降、数百万人が、検索や予約のため当社サイトを利用している。

組織構造については、12人で構成される技術チームが存在し、共同創業者の一人のCTO(最高技術責任者)に報告するようになっている。残りの社員は全員ビジネスチームに所属する。最近、マーケティング担当副社長のジェイ・バーク(Jay Burke)を採用した。彼は、かつて、旅行関連のクチコミ・価格比較サイトの「トリップアドバイザー社」において、多くのブランドに関係して、マーケティングや戦略的な提携を担当していた。私が、CEO(最高経営責任者)で、もう一人の共同創業者が運用担当のCOO(最高執行責任者)だ。



4.   あなたは2013年の資金調達で、245万ドル(2.45億円)を調達しました。それは最初の資金調達ですか?あと何回ぐらい投資ラウンドを実施する予定ですか。最終的に、IPO(株式公開)を実施するか、ワンデルーを売却する計画を持っていますか?

最終的に、当社の投資家は、買収であれIPOであれ、一種の退出戦略の道を探るであろう。それが明らかな目標となる。しかし、当社が買収されたとしても、私自身はCEOとして残ることを望んでいる。ワンデルーを通じてやりたいことがたくさん残っているからだ。必要な追加的な投資ラウンドの数を予測することは難しい。現在のところ、追加的な資金を調達することなく利益を計上している。しかし、成長し、事業を他の国に拡張することを望むなら、当社は、追加的な投資ラウンドを必要とするかもしれない。現時点においては、当社は、どのくらいの額の資金を調達するのか、明確な数字をもっていない。むしろ、成長するにつれてその必要性を検討し続けるだろう。



5.     ワンデルーの宣伝のためにソーシャル・メディアをどのように活用していますか。それ以外で、どのようなマーケティング手法を試しましたか。そのなかで、どれが一番効果的でしたか。

先に述べたとおり、最近、マーケティング担当の副社長を採用した。彼は、約1ヶ月前に業務を開始した。彼は、有料広告業務の先頭に立つ。もちろん、ソーシャル・メディアにも積極的だ。当社は顧客との情報交換を頻繁に行っている。さらに、どこに行ったらいいか、何を見たらいいかに関する大量のコンテンツを提供している。クチコミ効果も重要だ。顧客は「ワンデルー体験」を楽しんでおり、その情報を友人たちと共有している。

当社についての無料報道もたくさんある。多くの雑誌や他のメディアが当社についての記事を掲載してくれる。グーグル・アドワーズも利用している。しかし、依然として、ほとんどのアクセスは偶然当社のサイトを見つけて、サービスを試してみたユーザーが中心となっている。



6.   ワンデルーを起業し成長させていくうえで、どのような重大なチャレンジに直面しましたか。それをどのように乗り切りましたか。

バス会社と関係を構築し、当社に参加することを説得するのが最初のチャレンジだった。というのは、ワンデルーは新規のアイデアだったからだ。バス会社はオンラインでそうした手続きを行うことに慣れていなかった。当社は、そうした会社に試してみることを説得しなければならなかった。

技術面がもうひとつのチャレンジだ。ワンデルーがスタートしたときは、航空旅行産業にあるような中間的なインフラストラクチャーが、バス産業には存在しなかった。バス・システムに直接つながるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)はなかった。多くのバス会社にとって、そうしたシステム、インターネット、オンライン取引は新規のものだった。最初の中間的なインフラストラクチャーを構築するのに数年かかったが、まだ、完成していない。現在、完成にむけて努力している段階だ。



7.  ワンデルーの社名はどのように決めたのですか。社名はどのような意味をもっていますか。

社名を議論したとき、社名が人々に旅行がしたいとインスパイアーするような言葉を検討した。「wander」(歩き回る、さすらう)という言葉に、世界を旅する、開拓するという感じを覚えた。それから、言葉の最後の部分を考えて、ワンデルー(Wanderu)という言葉につながった。この言葉のサウンドがとてもいい。舌から自然に流れ出る感じがする。カンガルーのようにも聞こえる。誰かがワンデルーという名称を使っているかどうかをチェックするためグーグル検索をした。そのとき、ワンデルーは、インドに生息するサルの特定種の名前であることを発見した。そうしたことが、当社の今のマスコットにつながっている。人々がマスコットのサルを見れば、当社のブランドを思い出してくれる。



8.      成功した起業家は1社のみを立ち上げた人が多いです。あなたはすでに2社立ち上げています。1社に焦点を絞る場合と違い、「連続的」に起業するのはどのような感じですか。2社起業して成功するためには、異なった能力とスキルとしてどのようなものが必要となりますか。

起業家として成功するためには、少しばかりの狂気と、起業家として成功するんだというとても強い執着心が必要となる。1回だけの起業家と連続的な起業家との間に大きな違いはないと思う。起業家として成功すれば、その成功を複製できると信じている。重要な部分は、自分自身でリスクをとり、事業の立ち上げと運営に伴う浮き沈みに耐えるという決心だ。事業の運営において、すべての人間は必ずしもチャレンジに直面することを望んでいるわけではない。そうしたチェレンジを克服すれば、創業した会社を売却するか、その後、新しい事業を始めるか、別の産業に移るかなどの間には違いはないと思っている。

不可欠な要素、つまり、最も問題になる点は情熱である。自分がやっていることに情熱を持てないなら、ビジネスを構築し成長させることは難しいだろう。私についていえば、ファッションに情熱を感じたことは実はなかった。ファッションビジネスとしては成功したが、それを大企業に成長させようなどという願望を持てなかった。

一方、ワンデルーに関しては、それと反対だ。私自身のためだけでなく、何百万人という人々のために問題を解決するプロセスはとてもエキサイティングに感じる。この情熱により、企業が直面するチャレンジを克服することが可能になっている。そうした情熱は、どのような企業を運営するかを設計するうえでもとても重要となる。

さらに付け加えれば、神経の図太さも大切な要素だ。起業では複数のチャレンジを克服する必要がある。ビジネスは、いくつかの浮き沈みがあって進展する。浮き沈みという「変化球」に対応する精神的な能力を持ち合わせていないと、成功する可能性は低くなる。というのは、頂上への経路は一直線ではない。言葉を正確に思い出せないが、「成功への道のりは曲がりくねっている」という格言が頭に浮かぶ。確かにそのとおりだと思う。



9.   日本政府は、ファション、エンターテインメント関連の商品を含め、J-ポップ商品を米国、欧州、アジアに輸出することを促進するプログラムを実施しています。ファッションの専門家でもあるあなたは、日本のアパレル商品などファッション商品を米国に輸出する可能性をどのように評価しますか。どのような日本のブランドやデザイナーが好きですか。

すでに述べたとおり、「Shigoto」という、男性と女性を対象とした日本のアパレルブランドはポリーナ・ファッションのクライアント(顧客)だった。私は、日本のファッションがもっと米国マーケットに入ってくればいいという意見にもちろん賛同しているひとりだ。しかし、ワンデルーの事業をスタートしてから、3年半が過ぎた。私はその間、ファッションのPR事業を行っていないので、最新のトレンドには詳しくない。トレンドのファッションが米国では人気がある。日本のデザイナーは、トレンドの形や雰囲気を完全に理解している。何人かの日本のデザイナーは米国で人気があると思う。しかし、私はファッション産業には今はいないので、広範囲のレベルで日本のアパレルブランドの有望性を実際に評価することはできない。



10. 起業を考えている若い女性に対してどのようなアドバイスをしますか。

ほとんどの女性にとって、恐怖心が最大の障害だと思う。彼女たちは、男性優位社会において失敗すること、あるいは拒絶されるリスクを恐れているかもしれない。そうした恐怖心と戦うためのベストな方法として、とにかくそれと戦って前に進むことを薦めたい。彼女たちは失うものは何もない。私は、大学生のときに、最初の企業を設立するという幸運に恵まれた。そのときは、家族も子供ももっていなかった。支払うべき住宅ローンも持っていなかった。したがって、容易にリスクをとることができた。家族や子供がいたり、あるいは、ローンのある家を持っていたら、リスクをとることは難しい。さらに、現在、安定的な職業についていたら、その職を失ったとき、自分や家族を養っていけないという恐怖心をもつかもしれない。そうした恐怖心は、すべて妥当なものだが、決して、完全に消え去ることもない。現在ほど、自分の会社を起業するのにベストな時期はない。もしそれを待てば、起業をしないことを正当化するたくさんの理由を考えることになるだろう。繰り返すが、私のアドバイスは、「とにかく始めなさい」「今がその時」というものだ。


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学校の設立と教育プログラムの開講

背景
起業家をインタビューしている理由は二つあります。一つは、起業家の育成が日本経済の更なる成長に不可欠だと思うことです。起業家大国アメリカの起業活動、考えを紹介し、日本における起業活動を促進したいと思います。起業家にインタビューしている二つ目の理由は、個人的なものです。私も起業を目指しているので、これらの先駆者から成功のカギを訊き出したいと思っています。

私の起業計画はいくつかの部分から成り立っている大規模なものです。その最初の一歩として、来年、Play-Ed(遊びながら学ぶことを示唆するPlayful-Education )という教育プログラムを米国でスタートします。

共働きやシングル・マザーの多いアメリカでは、放課後のプログラムが多いのですが、将来の所得の基盤となるデジタル・スキルを教えるものはそれほど多くありません。そのため、これらのスキルとS.T.E.M.(Science, Technology, Engineering and Math)または異文化コミュニケーションの知識、能力を伸ばすために、米国のフロリダ州タンパ市で、教育プログラム(課外授業、放課後授業)をスタートしたいと思います。学校を建設する予定地は以下にリンクされますので、ご覧ください。


2016年の夏は、この設備を利用し、1週間の外国人向けの研修を開催する予定です。

1.アメリカの大学、MBA(経営大学院)プログラムの申し込み方、インタビュー(面接)、受験対策
2.コーディング(プログラミング)と英語の「二つのグローバルな言語」
3.セールス・プレゼンテーション

全ての研修は私(教育学博士、MBA)が指導し、マンツーマンのコーチングにもとづき指導します。授業のほかにも、異文化交流や、ディズニーランドなどのような観光も計画しています。

詳細は、私までに直接ご連絡ください。