2014年10月31日金曜日

2014-10-31 - 「補完的生産者」(コンプリメンター)は、ポーター理論を「補完」する6番目の競争要因だ!


 


補完的生産者」(コンプリメンター)は、ポーター理論を「補完」する6番目の競争要因だ!
 
 
 
 
 
バリー・ネイルバフ博士は、ゲーム理論にもとづき、プラスサム型のバリューネット(価値相関図)における「補完的生産関係」ならびに「補完的生産者」(complementors)を提唱する。たとえば、医者と製薬会社、州際高速道路と自動車、映画とポップコーン、ホットドッグとマスタード、マイクロソフトとインテルなどを想像してみよう。これらの商品の組み合わせは、補完的な関係にあり、この補完的な関係により、新たな市場を創造している。
経営戦略論の泰斗マイケル・ポーターが提唱する「ファイブ・フォース・モデル」(5つの競争要因)は、産業競争の静的な分析フレームワークだとされる。このモデルは、「一方が得をすれば、もう一方がその分だけ損をし、全体としてはプラスマイナスがゼロとなる」ゼロサムの競争状態を前提にしている。
それに対し、ネイルバフのバリューネットは、補完的な生産関係により、全体の市場が拡大し、各社の市場もそれに応じて拡大するプラスサムを前提にする動的な戦略分析フレームワークである。
ネイルバフが、このインタビューで語るように、バリューネットは、ポーター理論と対立するものではない。ネイルバフは、補完的生産関係は、ポーター理論の6番目の競争要因として考えることができ、ポーター理論を「補完」するものであると主張する。(ただし、ネイルバフによれば、ポーター博士はこの補完関係を6番目の競争要因として認めていない)。
ネイルバフは、ゲーム理論や経営理論の研究だけでなく、実際のビジネスでも大成功を収めている。それが、低糖アイスティー「オネスト・ティー」社の創業だ。甘いもの大好きのアメリカ社会で、「甘くないアイスティー」を普及させる壮大なプロジェクトは、ひとつの起業ストーリーとしてもたいへん興味深い。
聞く者(読む者)の注意をけっしてそらさない、博学多才なネイルバフのイェールからのレクチャーを、このインタビューを通じて存分に楽しんでもらいたい。
2014522日 インタビュー実施)
 
 
<プロフィール>
 
バリー・ネイルバフ博士(Barry Nalebuff)。イェール大学経営大学院教授。英国オックスフォード大学(博士/修士)。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)卒業。専門は、ゲーム理論と経営戦略論。ニューヨーク大学経営大学院のアダム・ブランデンバーガー教授との共著『コーペティション』で、ゲーム理論にもとづき、「バリューネット」(価値相関図)と「補完的生産者」(complementors)を提唱。コンサルタントも実施しており、顧客にはアメリカン・エキスプレス社、GE社、グーグル社、マッキンゼー社、NBAなど。イェール大学での教え子、セス・ゴールドマン氏を共同で低糖アイスティー「オネスト・ティー」社を創業し、大成功を収めた。現在、同社は、コカコーラ社に買収され同社の子会社になっている。オネスト・ティーの創業を紹介したマンガ『ミッション・イン・ア・ボトル』(Mission in a Bottle)も好評発売中。
 
 
 
1.  バリューネット(価値相関図)とは何か?

「バリューネット」(価値相関図)の概念を明確に示す企業または産業の最近の事例を紹介してください。
 
(1)補完的生産者とは?
バリューネッはゲームの様々なプレイヤーに対するより豊富な考え方である。これは伝統的な視点だが、資金が顧客から企業へ流れ込み、そこからサプライヤー(供給業者)へ流れる垂直な関係がある。競合企業間の水平的な関係があることも理解している。しかし、補完的な生産関係にある企業(complementors)とその関係には注目されていない。補完的生産者(conplementors)は、競合企業と対照的な役割を果たす。競合企業は自社商品の価値を減らすのと反対に、補完的生産者はその価値を高めるわけである。実際、その意味で、競合企業より、「代替商品の提供企業」と呼んだ方が適当かもしれない。
 
代替商品や補完商品は、(需要サイドだけでなく)供給サイドでもありうる。ハーバード大学とイェール大学は(需要サイドで)顧客(学生)を獲得するために競争している。同時に、供給サイドでも教員の採用のために競争している。ハーバード大学の教員になる学者は、イェール大学では教えない。一方で、例えば、ハーバード大学の教授がイェール大学の教授が使うケーススタディー(事例研究)を執筆したら、両大学の教員は補完的な関係になる。
 
(2)インドのタタ・モーターズの補完的生産関係
次にビジネスの世界に目を向けよう。最近、インドのタタ・モーターズが世界で始めて2,000ドル以下の価格の自動車、「タタ・ナノ」を導入した。こんなに安い価格で車を製造するのは、エンジニアリング(工学)における一種の奇跡である。中古車とバイクがタタ・ナノの代替商品になるだろう。しかし、タタ・モーターズは、タタ・ナノの生産を計画したときに、これらを補完商品として考慮しなかった。具体的にいえば、タタ・ナノをいちばん購入しそうな顧客は、バイクを下取りに出す可能性が高い。にもかかわらず、タタの販売業者は、下取りのバイクを受け取る設備もないし、能力もなかったのである。
 
さらに、タタ・モーターズは自動車ローンを考えなかった。これまでバイクを使っていた顧客が、車を初めて買うとき、一般的に自動車ローンの信用審査をクリアできない。ここでの問題は、顧客に信用審査に抵触する履歴があることではなく、信用情報そもそもないことである。当初、タタ・モーターズは、自動車ローンを提供する準備をしなかったので、見込み客の多くがタタ・ナノを購入できなかった。最終的に、タタ・モーターズは上記の2つの問題を是正した。同社は、バイクの下取りを可能にし、銀行借り入れを利用しない層に自動車ローンを提供することになった。しかし、補完商品を考えなかった結果、同社はタタ・ナノを売り出したときに、不利な立場に置かれた。
 
(3)トイザらすは「デスティネーション・ショッピング」
日本の状況は違うと思うが、アメリカでは、ウォルマートがトイザらスを抜いて、最大の玩具小売業者になった。(アメリカにおいては) トイザらスは、「デスティネーション・ショッピング」 (「目的地買い物」の意味。特定の商品、この場合、玩具購入のために行く専門店である)である。一方のウォルマートは、顧客が常に買い物に出かける場所である。したがって、ウォルマートのほうが、より良い補完商品をもっている。誕生日のプレゼントを買うためにだけトイザらスに行くよりも、ウォルマートに他の物を買いに行ったときに、バースデー・プレゼントを簡単に購入できる。
 
私が知っている限り、日本ではトイザらスはデスティネーション・ショッピングではない。むしろ、トイザらスの店舗はショッピングセンターの中にある。あるいは、その他の小売店と隣接している。その結果、トイザらスは、アメリカに比べ、日本でより成功している。同様に、アメリカでは、人が既にいるニューヨークのタイムズスクエアのような場所に店舗を開設する必要がある。あるいは、子供用の理髪や6番通路で子供用の誕生日パーティーを開く選択肢のような補完的な商品やサービスを提供しなければならない。つまり、米国において、トイザらスは顧客に来店してもらう他の理由を創り出さなければならない。
 
ガソリンスタンドも補完商品に関する類似の問題に悩んでいる。世界一のガソリンを販売しても、コンビニがないと、コンビニを併設している競合ガソリンスタンドに負けてしまう。あなたは、ガソリンの事業を行っていると思っているが、実は、コンビニ事業にも関わらなければならないのだ。
 
(4)補完的生産関係は6番目の競争要因
マイケル・ポーターは、(自分の「ファイブ・フォース・モデル」(5つの競争要因モデル)において)、私が提唱する補完的生産関係を6つ目のフォース(要因)として認めることに消極的である。彼は、補完商品とは単に、価値を高めるものと主張し続ける。言い換えれば、そのようなものとして補完財が存在すれば、より好ましいと考えるが、特定の要因とはみなさないのである。彼の見解に対して、私は、(競争要因の)定義からして、補完的生産関係(あるいは補完材)は、フォース(要因)とみなされなければならないと反論している: 文字どおりに解釈すると、彼が、(5つの競争要因のなかで)代替商品について議論するのであれば、その反対概念である補完商品も当然考慮しなければならない。さらに、(5つの競争要因モデルで)産業を分析するのであれば、産業の補完的生産構造に着目する必要がある。たとえば、(補完的生産関係にあるコンピューターのソフトウェアと半導体メーカーを考えると)、マイクロソフトは、インテルが独占であるかどうか懸念している。もし独占であれば、インテルは、マイクロソフトと同様に業界の全利益を獲得する能力をもつことにある。だからこそ、マイクロソフトは、(それを防ぐために)インテルのライバルの半導体メーカー、AMDを支えている。同様に、インテルはマイクロソフトの独占的な地位を懸念しているので、(マイクロソフトのライバルである)リナックスを支える。つまり、補完的な生産関係にある産業構造が両社の「利益を獲得する能力」に影響を与えているという事実が、補完的生産関係(あるいは補完商品)が産業の収益構造の6番目のフォース(要因)である根拠を示している。

 
 
2.ブルー・オーシャン戦略との比較  — 女性専用ジム「カーブス」
バリューネットは、ブルー・オーシャン戦略に対して、どのように位置づけられますか。共通点は何でしょうか。違いは?両方のモデルは両立可能ですか
 
ブルー・オーシャン戦略に対して、二つの考え方がある。ひとつが、競合企業が見逃した商品市場のニッチを見極め、自分だけの持てる市場を開拓することである。女性専用のカーブスフィットネスの例を参照しよう。企業が、従来、主に男性または男女混合の顧客ベースのためのジムに焦点を絞ってきたなかで、同社が女性専用のジムを開拓したといえるだろう。

もうひとつの考え方は、ジムにいる女性は他の女性が一緒にいることを「補完的」だと感じることである。対照的に、ジムに男性がいる場合、その男性が競争相手と見なされる。女性は、トレーニングマシンが男性の使用する重さのレベルで設定され、そこに彼らの汗がたくさんついている環境を好まない。さらに、男性の好む音楽が流れていて、男性の雰囲気が強いジムでは、女性は運動する関心が低くなる。例は違うが、私が、コカコーラを飲んだ直後にペプシを飲む気にならない状況に類似している。つまり、ジムに男性がいるからこそ、女性にとって、ジムという商品自体の魅力がより低下するのである。対照的に、ジムに他の女性がいることは、女性にとってのジムの魅力を高める。これは、「他の顧客」(の存在)が、場合により、補完商品にも代用商品にもなる一例だ。ブルー・オーシャン戦略の本質は、単に、競合相手がいない市場を考えることだけでなく、補完商品の使用により、いかに新たな価値を生み出すかを考察することでもある。
 
 
3.「一時的な競争優位」との関係は?
バリューネットは、「一時的」な性質がありそうです。この意味で、リタ・マックグラス(コロンビア大学)が提唱する「一時的な競争優位」の概念に類似しています。一方、あなたは、競争優位は持続可能でなければならい、あるいは最低限維持されなくてはならないという意見を持っているようです。バリューネットは、持続可能ですか、一時的ですか。バリューネットが「一時的」になり得る条件や持続可能になり得る条件は存在しますか。
 
「バリューネットが持続可能である、または一時的である」という表現はこの専門用語の正しい使い方だとは思わない。バリューネットとは、ある種の「地図」なのである。むしろ、競争優位が持続可能だと主張できる。ポーターやマックグラスなどが競合企業の側面から持続可能な競争優位について既に充実した解説をしているので、私から付け加えたい説明はそれほどない。しかし、補完的生産関係(complementors)にもとづく競争優位の持続性について言いたいことがある。カーブスのあとに、他の企業が「ペッパー」(こしょう)または「エグプラント」(なす)のような他のブランドで市場に参入したら、カーブスの競争優位は低減するかもしれない。他方では、他社が補完商品を導入したときに、自社商品も恩恵が受けられる。その結果、自社の補完的生産関係にもとづく競争優位が残る。そうした競争優位は消えることはない。
 
タタ・モーターズの例に戻ろう。他の企業が銀行借り入れを利用しない層に自動車ローンを提供し始めたら、この補完的サービスはタタ・モーターズを支援しタタ・ナノの売り上げを増やす効果がある。実際、顧客がこのような補完的サービスをより容易に、かつ安く取得できるようにしてあげるのは重要な目的となる。私は、自分で名付けた「プロプライエタリ・コンプリメント」(proprietary complements、自社のための補完商品)を、産業共有の補完商品と区別している。仮に、タタ・モーターズにとって、タタ・ナノの代替商品を販売する競合企業が存在しなければ、誰が自動車ローンを提供するかは大した問題ではない。その場合、銀行が自動車ローンを提供しても何ら問題ない。他方で、競合他社がタタ・ナノの代替商品を販売する場合を考えよう。その場合、自社(タタ・モーターズ)の自動車ローンがプロプライエタリ・コンプリメントであるとき、つまり、その自動車ローンをタタ・ナノの購入者にしか提供しない場合、競合企業が代替商品の自動車のプロプライエタリ・コンプリメントになる自動車ローンを提供するなら、タタ・ナノと自動車ローンの補完関係の価値は失われる。だからこそ、自社(タタ・モーターズ)は、競合企業より良い補完商品(この場合自動車ローン)を提供したいと考える。そうなれば、タタ・モーターズは、「一時的な補完関係にもとづく競争優位」を享受できる。要するに、自社商品の補完商品の市場が発展するにつれ、補完商品の誕生ならびに存在は、自社に損害を与えるのではなく、恩恵を与えるようになる。

 
 4.産業かアリーナか? — グーグルの無人自動車
変化が激しい現在のインターネット時代では「アリーナ」(直訳: 競技場;  意訳:  会社が競争する場)という概念が「産業」より、戦略分析におけるもっと適切だと思いますか。あなたのバリューネットの理論から考えると、どちらの用語がより適切でしょうか。
 
テスラモーターズ (米国の電気自動車メーカー)の最新の動向をみると、電気自動車産業の最大の障害は電池技術なので、同社は独自に電池工場を建設している。この電池技術は改善が必要だ。この電池技術は、一社単独で生産するにはコストが高すぎる補完商品でもある。その結果、電池技術の開発について多くの提携が行われている。より進んだ電池技術は特定の1社だけではなく産業全体に好影響を与えることになる。くわえて、そうした電池技術に関する提携は、この産業に欠けている「中核をなす補完的生産関係」でもある。
 
グーグルの無人自動車の開発手法は、極めて詳細な地図を開発するプロセスのように映る。それは自分のラップトップのパソコンで見る簡単な地図ではない。歩道の縁石の高さから道路のくぼみまで、詳細な情報を含む地図である。グーグルのデータベースはプロプライエタリ・コンプリメント(自社のための補完商品)の一例である。つまり、無人自動車を利用したいなら、グーグルが持っている道路に関する詳細のデータが(補完的に)必要となる。
 
グーグルは、最近、ロボットの研究開発の世界最先端企業の一社であるボストン・ダイナミクス社を買収したと思う。同社は、オフロード(一般道路外)の地域を走行できる素晴らしい四足歩行のロボットを開発した。
 
なぜ、グーグルがそういう会社を買収するのだろうか。なぜなら、そのロボット技術があれば、オフロード地域の地図の作成が可能になるからだ。例えば、グーグルは、いつか、(そうしたロボット技術を活用し)ショッピング・モールのようなビルの内部に関するデータを収集したいと思うだろう。同社はデータの収集と整理に長けている。無人自動車がデータに依存して走行するだけでなく、いったん完全に機能するようになったら、(走行しながら)データを収集することも可能になる。グーグルの無人自動車は、グーグルのストリートビューのように、道路を走行しながら、様々な写真を撮影できるようになるだろう。
 
グーグル・カー(つまり、無人自動車)の発明は、(従来)補完的関係にあるドライバーを取り除いてしまった。でも、その結果、現在はない自動車保険サービスが必要となるが、それは、無人自動車にとって重要な別の補完商品となる。我々は、いかに無人自動車に対して保険を提供したらよいか、現在分かっていない。新たな道路交通規制も無人自動車の導入に合わせて進化しなくてはならない。それも、無人自動車に対するもう一つ補完商品/サービスであるが、現時点では明確に定まっていない。仮に無人自動車を製造しても自動車保険という補完商品を付け加えるまで、無人自動車は利用できない。いったん、保険産業がこの補完商品を創りだしたら、無人自動車が普及していく。そうなれば、無人自動車は、やがて消え去る世界で最も「一時的な商品」ではなくなる。

一方、競合企業が無人自動車を製造できるかどうかは、その会社がどのように計画するかに左右される。その競合企業がグーグルのデータベースを利用する計画なら、グーグルにライセンス料を支払わなければならない。この場合は、グーグルの競争優位が維持される。対照的に、競合企業が、無人自動車が他の自動車と情報をやり取りできる代替の技術を開発したら、その競合企業はグーグルの地図データベース(補完商品)に依存していない方法で、グーグルと競争できるかもしれない。
 

5.日本企業への処方箋
かつて賞賛されたソニー、パナソニック、ニンテンドーなどの日本企業は現在、世界市場で苦戦しています。バリューネットの視点でみた場合、これらの企業の競争における苦戦の原因は何でしょうか。これらの会社が、どのようにあなたの理論の原則を応用したら、成功する戦略が策定できますか。


1)日本企業の過剰なアップグレード?
日本企業が直面するもっとも大きな課題の一つは、そうした企業の商品が良すぎるようになったという事実にある。まず、白黒テレビからカラーテレビに推移し、カラーテレビから高品位テレビや60インチのスクリーンにまで移行した。それらのすべては、顧客がお金を支払ってもいいと思う顕著な技術上の改善だった。しかし、私は、0マイルから時速60マイルへ3秒で加速してしまう自動車を買おうとは思わない。私にはそういう技術は必要ないからだ。同様に、テレビの最新版を買いたくない人もいる。私は現在持っているテレビから3Dや4Kの最新技術にアップグレードする必要を感じない。もっと大きいな画面も必要でない。スクリーンがさらに大きくなったら、私の家の壁には、そのような大画面を取り付ける空間はない。


同じ考え方がパソコンにも当てはまる。私は机の上に、スーパーコンピューターは必要ない。ほとんどの場合、コンピューターのほうが私の思考や作業を待ってくれる(つまり、現行の処理速度で十分である)。現行のラップトップの最も重要な特徴は重量と電池寿命だ。処理速度や画面サイズではない。こうしたことを理解したため、電池開発が活発になったのだ。私は現在、研究室に1台所有し、家にも1台あり、全部で、異なったタイプのラップトップを3台持っている。その中には、3、4年前のものもあるがまだ正常に稼働している。少しサイズが大きいので、いつも持ち歩きたくないが、よく考えると、文書処理を行ったり、プレゼン用のパワー・ポイントスライドを作成したり、エクセルを利用したりしている。これらの作業なら、私の現行のラップトップで十分である。ビデオ編集をする場合は、処理速度が課題になる。とりあえず、私としては、主にラップトップの携帯

性と電池の寿命が気になる。
日本企業にとって、このような技術的な課題が根本的な問題であると私が思っている。私たちは、顧客がもはや「sustaining innovation」 (持続的な革新)を重視しなくなった地点にまで辿り着いている。(ハーバード大学教授の)クレイトン・クリステンセンが言うように、日本企業は顧客の望みを超える商品を製造し続けている。顧客は、そうした望みを超える新しい特徴のために、お金を支払う意志はない。その結果、日本企業の持続可能な改善はもはや、その会社にとって価値を創り出していない。このジレンマを解決するために、日本企業は、根本的に新しい「破壊的革新」を創造しなくてはならないが、それは大きな挑戦である。もし伝統に固執した企業なら、このチャレンジは大きな苦難となる。
アップルのiPodの登場を振り返ってみよう。この商品のヒットの鍵は、違法ダウンロードされた音楽の補完商品になっていたという事実だったと私は考える。当時、ナップスターのような音楽共有サイトは、人々が基本的に無料で、違法ダウンロードされた音楽の巨大図書館を築くことを可能にした。しかし、それらのすべての楽曲を持ち歩き、整理し、または再生する良い方法は存在しなかった。しかも、すべての音楽がデジタルだったので、人々はウォークマンを使わなければならなかった。

(2)今後も困難が予想される日本企業
アップルは、人々がこうした音楽を十分に楽しむ補完商品を導入するチャンスを発見した。今はアップルのiTunesストアが音楽の購入を容易にしているが、当時、音楽の違法ダウンロードのほうが購入するよりも簡単だったわけである。今日、消費者はもはや音楽を買っていない。代わりに、スポティファイ(Spotify)、 パンドラ(Pandora)、 ビーツ(Beats)のような無料音楽サービスに加入している。消費者はもはや音楽を所有しようと思っていない。なぜなら、いつでも好きな曲を再生できるからだ。消費者は大容量のデジタル保存装置を必要としていない。唯一必要なのは、インターネットへの接続だけである。


アップルの商品、iPhoneやiPadからカメラに話題を移すと、今日、電話は基本的にカメラの代替商品になっている。アルファ(α)のカメラの商品ラインが素晴らしいソニーのように、世界一のレンズを製造しても、現在、人々が持ち歩いているスマートフォンが消費者個人にとって最高のカメラであり、それにはかなわない。あなたの携帯電話内のカメラの機能は、ソニーの高級カメラにはかなわないが、(洋服の)ポケットで携帯できるという点で勝者になる。あっと言う間に、携帯電話のカメラが画像安定やズーム機能をもつようになっている。これらの技術が進化するにつれ、ソニーがいま直面する窮地は悪化していくだけだ。全体的に言えば、ソニー、パナソニックなど、かつて卓越していると礼賛された日本企業で働く友人たちに対して、何も朗報は持っていない。

6.「オネスト・ティー」とアンデルセンの童話「えんどう豆の上に寝たお姫さま」
あなたは、ある講演で、(あなたが関与した)低糖アイスティーの「オネスト・ティー」(Honest Tea)について、「えんどう豆の上に寝たお姫さま」(アンデルセン童話)を紹介しました。そのとき、その童話の新たな解釈を紹介し、起業を希望する人々が、いわゆる「えんどう豆」に注意を払い、顧客の要望を完全に満たさない商品または顧客を苛立足せる状態を、機会の源泉として捕らえる提案をしました。最近、アメリカ市場または世界市場では、どのような「えんどう豆」があなたの関心を引きましたか。その理由は何ですか?


この童話では、王妃が8枚のマットレスの上に寝ている。一番下のマットレスの下に一粒のえんどう豆がある。王妃は、そのえんどう豆が気になって、眠れない。この童話の一つの解釈は、これによって彼女が真の王妃だということが分かることである。王妃だけが、こんなに些細な苛立ちを気にするからだ。もう一つの解釈がある。それ「もういいよ、王妃。この小さなえんどう豆のせいで、苛立ってはいけない。」。多くの両親は自分の子供たちに対し、この態度を示す。でも、私の考え方では、我々が我慢してきた「えんどう豆」の苛立ちを追及すれば、最終的には素晴らしいビジネスチャンスに行き着くかもしれない。「オネスト・ティー」の場合は、私が既存の飲料選択に対して不満だと思ったのが「えんどう豆」だった。従来の飲料は、水のように、つまらない味のもの、あるいはソーダのような液体の飴に似たもの、あるいは、危険なダイエット飲料だった。面白いことに、日本にはそういう状況は当てはまらない。日本には「ウィーク・ティー」(無糖茶や薄い味の紅茶/緑茶)、すなわち無糖または低糖のお茶の缶飲料がある。オネスト・ティーの登場の前には、アメリカでは類似商品は存在しなかった。

現在、酔いたくない人にとってのアルコール飲料は存在しない。このため、私は、最近、とても低いアルコール度の飲料を生産する会社を立ち上げた。商品名は、「KomBrewCha」(コンブルーチャ)で、発酵茶「Kombucha」(コンブチャ)からとった。会社の標語は、「Get tickled, not pickled」(酔っぱらわず、ほろ酔い気分になろう)である。ほろ酔い気分になりたいが、飲んだ後に仕事に戻ったり、運動したいときに楽しめる商品である。コンブルーチャなら極端に走らず、社交を楽しめる。


How entrepreneurs can change society - the story of Honest Tea:
Seth Goldman at TEDxMidAtlantic 
 
 

 
 
 
このブログは、ジョーが執筆し、皆様にお届け致します。ジョーことジョセフ・ガブリエラ は、2000年に来日したアメリカ人。格闘技ファンなら誰でも知てる、K-1ファイターのアンディー・フグ氏にそっくり!1989年米国ワートン・スクールを卒業。その後ペパーダイン大学を皮切りに、イリノイ大学、南フリダ大学を卒業。MBAを含め2つの修士号と博士号を取得しました。日米合弁IT関連企業、スイス系証券会社、米系銀行、そして日系外食企業など幅広い業界の勤務を通して様々なビジネス経験を積みました。趣味は、水泳、読書(村上春樹氏の大ファン!)、ピアノ、そして様々な国の言葉を勉強する事です。ちなみに、2年前から新たに中国語勉強に励んでいます!この記事についてのご質問、感想、また意見を歓迎します。また、共同研究者である杉本有造氏とともにコンサルティング業務も行っていますので、お気軽にご相談ください。



 
ジョセフ・ガブリエラ
東洋大学
gabriella@toyo.jp

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Japanese Blogs:
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杉本 有造
IES全米大学連盟・東京センター
(The Institute for the International Education of Students, Tokyo)講師

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2014年10月5日日曜日

2014-10-05 ジョーナ・バーガー博士がソーシャルメディア・マーケティングの最先端を語る!





 
クチコミ・マーケティングの世界的権威
単独インタビュー特別掲載!

 
日本企業のエグゼクティブや
ソーシャルメディア担当者 必読! 


ハーバード、スタンフォードに並ぶ米東海岸名門ペンシルベニア大学ウォートンスクール
ジョーナ・バーガー博士がソーシャルメディア・マーケティングの最先端を語る!


昨年の12月、本ブログで、「クール・ジャパン」の関連で、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのジョーナ・バーガー(Dr. Jonah Berger)博士の近著『Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版])を紹介しました。その本は、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの両紙でベストセラーになるなど、米国内で大きな反響を巻き起こしました。

今回は、超クールなジョーナ・バーガー博士との単独インタビュー(2014226日インタビュー実施)を掲載しています。御社のマーケティング戦略、SNS戦略を立案するときに役立つのではないかと思います。

ジョーナ博士のインタビューに関するご感想/ご意見があれば、いつでも歓迎しますので、ご遠慮なく私までお伝えください。その場合、適宜、私(ガブリエラ)がジョーナ博士に直接取り次ぎます。お待ちしております。

 
今や「広告やマーケティングで、ソーシャルメディアを使わないという選択肢はありえない」といわれる時代だ。そうした状況をうけ、クチコミ広告(Word-of-mouth Marketingやソーシャルメディア・マーケティング(Social Media Marketing)の研究の世界的権威、名門ペンシルベニア大学ウォートンスクールの新進気鋭のマーケティング学者ジョーナ・バーガー博士に、企業がソーシャルメディアで成功するための秘訣をわかりやすく解説してもらった。バーガー博士の近著Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版]は全米でベストセラーを記録するなど、今、世界が最も注目する30代の若手マーケティング学者だ。彼は、ニューヨーク・タイムズ紙(ウェッブ版)が「24時間」「1週間」「3ケ月」の単位で公表する「最も多くの人々に共有された記事リスト」に着目し、7,000記事を熟読した。その後、すべての記事の内容を肯定的・否定的、感情(畏敬感、悲しみ、不安)、興味、驚き、実用的な価値、文字数、著者の知名度・性別、ウェッブ上の掲載位置などの多様な項目で分類し、統計的な解析を行った。ともすれば、直観的かつイメージ的にとらえられやすいクチコミ」の要因を、心理学の知見にもとづき科学的に解明しようとする彼のアプローチが今世界的に高く評価されている。その若さで有名学術誌に多数の論文を発表。その学術的知見をもとに、多くの講演活動を実施。コカ・コーラ(Coca-Cola)、グーグル(Google、サムスンSamsungなどのグローバル企業にもアドバイスするなどコンサルタントとしても活躍。また、彼は、2011年には、ウォートンスクール内の「アイアン・プロフェッサー」(鉄の教授)賞も受賞するほどの実力と人気を兼ね備えた教育者でもある。



ジョーナ・バーガー博士のプロフィール
Dr. Jonah Berger, Ph.D. 米ペンシルベニア大学ウォートンスクール准教授(専門:マーケティング)。2007年スタンフォード大学経営大学院修了。博士(マーケティング)。2002年スタンフォード大学卒業。近著『Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版])はニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの両紙でベストセラーとなる。The Journal of Consumer Researchなど著名学術誌に多数の論文を発表。ニューヨーク・タイムズ紙、ウォールストリート・ジャーナル紙、ハーバード・ビジネス・レビュー誌などにも多数寄稿。世界的な企業へのコンサルタント、多数の講演会も含め、クチコミ広告、ソーシャルメディア・マーケティングに関して今、世界で最も注目されている学者である。写真はすべて、著者本人の提供。

ウォートンスクールのバーガー博士のウェッブサイト:
https://marketing.wharton.upenn.edu/profile/311/
バーガー博士個人ウェッブサイト: http://jonahberger.com/


<インタビュー>
1.現在の米国のソーシャルメディア・マーケティングの最先端の状況を説明してください。

クチコミ(バイラル)によるマーケティングは、従来型の広告/宣伝よりも「10倍」も効果的だ。現在の消費者は基本的に広告を信じない。なぜなら、従来の広告の背後に企業が何とか商品を売ろうとしている意図を感じとるからだ。でも、消費者は自分の友達のいうことなら信じる。その結果、個人と個人の間のコミュニケーションが消費者の行動に大きな影響をおよぼす。どの映画をみるか。どのレストランに行くか。何を買うか。人々はソーシャルメディアを使って情報を交換し、そうした行動が他の人々の購買行動に強力なインパクトをもたらす。こうした状況から、企業は、広告投資を、従来型の広告から、ソーシャルメディアやオフライン型のクチコミによる広告にシフトするようになってきた。クチコミによる広告手法は、費用が安いだけでなく、消費者の行動に影響を与える点できわめて優れている。私は、そうしたクチコミの原理を応用するように、コカ・コーラ(Coca-Cola)社、グーグル(Google)社、サムスン電子(Samsung)社に助言し、すでにこれらの企業はきわめて大きな成果を手にしている。


 
2.特に、注目しているソーシャルメディア・マーケティングの成功企業を教えてください。

ソーシャル・メディアで特に成功している企業として、コカ・コーラ(Coca-Cola)社をあげたい。コカ・コーラ社の手法は、信頼がありかつ新鮮で、同社の顧客と「感情/情緒的な関係性」を醸成することに成功している。特筆すべきは、コカ・コーラ社が、単にソーシャルメディアを別の広告手段とみなしているのではなく、「なぜ顧客がソーシャルメディアを利用するのか」「その顧客が情報機器を使ってどのように情報を交換し、他人との関係性を築くのか」を理解していることだ。


 
3.クチコミ、ソーシャルメディア広告の成功の方程式はありますか?

ソーシャルメディア・マーケティングで成功するかどうかは、顧客の行動パターンを理解できているかどうかに左右される。そもそも、顧客はどうして、情報を共有するのだろうか。多くの企業が、ソーシャルメディアを使った広告をやればそれで十分だと思っている。そして、いろいろな情報提供技術は、単に「テクノロジーの問題」だと考え、それが「戦略の問題」であることに気づいていない。そうした情報技術を効果的に使う方法を理解していなければ、多額の資金が無駄になってしまう。

私の近著『Contagious: Why Things Catch on』のなかでも述べているが、クチコミ宣伝で成功するためには、「6つの原則」を理解することが大切だ。その6つは、科学的な実証研究にもとづくもので、人々が「語り、それを共有したい」と思うようになるための重要な要素だ。私は、英語の頭文字をとって「STEPPS」(ステップス)の原則と名付けた。それが、ソーシャル・カレンシー(Social Currency)、トリガー/きっかけ(Triggers)、感情(Emotion)、露出可能性(Public)、実用的価値(Practical Value)、物語(ストーリー)性(Stories)だ。わたしは、なぜ特定の商品やブランドがクチコミを通じて話題となり、またインターネット上の情報が拡散するのかをテーマとする精緻な学術研究を行って、この6つの原理を導き出した。このSTEPPSの6つの原則に沿いながらクチコミを生むような情報コンテンツ(たとえば動画)を作り出せば、企業なら人気商品を生み出し、個人でも考えや表現で大きな評判を獲得することができると考える。


STEPPS」:クチコミ成功のための「バーガーの6つの原則」
ソーシャル・カレンシー (Social Currency
社会的な評価・尊敬、他人にカッコいいと思われること、他人に自慢できること

 
トリガー (Triggers)
 人に何かを思い出させるきっかけ、何かの連想につながっていくもの


エモーション(Emotion)
 感情や情緒を刺激するようなメッセージ性


パブリック(Public
多くの人に共有してもらえるような露出可能性。たとえば、ある人が身につけているのを見て、それが真似されていくこと


プラクティカル・バリュー(Practical Value
情報の実用的な価値、情報受信者にとって意味があるもの、関係があるもの


ストーリー/物語性 (Stories
ある情報が共有されていくとき、それを包み込むような物語、ストーリー/ドラマ性


4. STEPPSのなかの「ソーシャル・カレンシー」とはどういう意味ですか?

アップル社のiPhoneを例にとろう。新型モデルが発売されるときはアップルストアの前に長蛇の列ができる。長い列にならんで、やっと新しいiPhoneを手にした顧客は、その直後にどのような行動に出るだろうか。ほとんどの人が、そのiPhoneをゲットした様子を写真に撮り、その写真をすべての友人に配信するに違いない。どうして彼らはそうした行動をとるのだろうか。それは、他の誰よりも早く新型iPhoneを手にしたことで、「自分がカッコいいと他人に思われる」と考えているからだ。他の誰もが持っていない「何か」を最初に手に入れることができれば、それはかなりのステータス・シンボルになる。また、「事情通」として他人から尊敬される。つまり、彼/彼女は、社会的な高い評価、すなわち、ソーシャル・カレンシーを得ることになる。よりカッコ良く見え、他人に自慢できるようになればなるほど、人はその情報や状況を他人に話したくなる。


 
5. ソーシャル・メディアの未来をどのように考えていますか?今後、企業として、どのような方向に着目すればいいですか?
 
ソーシャルメディア・マーケティングの将来は、それが、顧客の「インサイト」(Insight、つまり、「心の奥底にある感情」に働きかけることができるかどうかにかかっている。顧客のインサイトをつかむことができなければ、最終的にその企業は業績悪化に陥ることにになる。残念ながら、現在でも、多くの企業が、ソーシャルメディアを広告の(技術的)一手段とみなしている。こうした企業は、単に広告をYouTubeの動画に載せればそれで仕事は終わったと考えている。しかし、企業が、「そもそも顧客はなぜ情報を共有しそれが大きな話題になっていくのか」を理解しなければ、多額の広告費用を無駄にすることになるだろう。


 
6.ソーシャルメディアについて、先進国米国からみて、日本企業やマーケターにアドバイスはありますか?
 
情報技術に重きを置くのではなく、消費者心理をより重視していくべきだと思う。そもそも、日本の消費者はソーシャルメディアをなぜ使うのか。そうした心理学的な知見を活用して、効果的な広告戦略を実施すべきではないか。企業は、単に情報の(表面的な)フォロワー(追従者)を増やすだけでは十分ではない。鍵となるのは、「エンゲージメント」(engagement)という考え方だ。一体何人の顧客が、自社の広告、商品の情報を実際に共有してくれ、最終的に購入してくれるのか。あるいは、そのブランドに、真の意味で、「強い思い入れ」や「愛着心」をもってくれるのか。クチコミによって、そうした真の顧客を増やしていくことが重要だ。


7.日本政府が、クールジャパン戦略として、日本文化を積極的に世界に発信していこうとしていますが、アメリカ市場をターゲットにする場合、ソーシャル・メディアをどのように有効に活用すればいいかアドバイスをください。

インターネット時代に入り、世界の距離はかつてないほど縮まっている。今日、日本で人気がでたものが、翌週にはアメリカで話題になっていることが普通にありえるようになっている。しかし、そうした状況を可能にするためには、流行や文化的な商品の場合、人間を介した「社会的な結びつき」を使って、地理的な壁を乗り越えなければならないだろう。

たとえば、日本の流行や人気が出た文化的商品が、まず、日本から、アメリカ在住の日本人に伝わり、そこから、アメリカ社会に広がるといった方法が考えられる。たとえば、2012年にアメリカ国内で大反響を巻き起こした韓国のミュージシャン、PSY(サイ)の「カンナムスタイル」はアジアのポップ文化が地理的な国境を乗り越え米国で人気を博した好例だ。YouTubeにアップロードされたカンナムスタイルの動画は世界の何億人もの人々に視聴された。もちろん、そうした状況が起こるためには、まず、数百万人の人々に視聴されなければならい。そのようなクチコミの行動を理解するためには、心理学の知識や発想が重要となってくる。


 8  .チャンスがあったら、日本を訪れ、講演会など開催される希望をお持ちですか。

私は、これまで、世界の多くの企業にアドバイスをしてきた。そうした経験から、各企業は同じような課題を抱えていることがわかった。「どのようしたら、顧客ベースを拡大できるのか」「どのような方法なら、新商品やあたらしい事業に人気が出て話題になるのか」つまり、企業規模、営利、非営利にかかわらず、クチコミがどのよう社会的な影響力をつくりだすのか、そのメカニズムを理解することがとても重要だと考えている。私の経験や知見を、多くの日本企業と「共有」できればと思っている。近い将来、その機会が訪れることを期待している。

(インタビュー実施:2014226日)
 


 
Contagious: Why Things Catch On" by Jonah Berger
http://www.youtube.com/watch?v=yIUTE6t1Qcc


インタビューの企画/実施/翻訳

ジョセフ・ガブリエラ Joseph Gabriella(東洋大学法学部 専任講師 博士/MBA/MS)。杉本有造(IES全米大学連盟東京センター講師 博士/MBA)。両者の共著に『「ヴィクトリアズ・シークレット」が全米の女性に愛されるワケ』『エレベーター・スピーチ入門』(いずれも我龍社)があり、ともに研究/教育以外にコンサルタントとしても活躍。