2015年10月25日日曜日

2015-10-25 - マス・カスタマイゼーションの先端技術を活かし、オンラインで芸術家の作品を世界に販売!






アナスタシア・レング

「ハッチ」(Hatch)の共同創業者。同社はカスタムメイドの日用デザイン用品(デザイナー商品、アクセサリー、キッチングッズなど)を専門的に取り扱うネット上のマーケットプレイスを運営する。「ハッチ」を創業する前には、5年以上、グーグルに勤務する。グーグルの本社(マウンテンビュー)で、プロダクト・マーケティング・マネージャーとして活躍。Google VoiceGoogle ChromeGoogle Walletなどの技術開発の初期段階にも関与。ペンシルベニア大学卒。大学では心理学、社会学、フランス語の3つを専攻。アメリカに移って来る前に、ロシア、ベトナム、バーレーン、ハンガリー、フランスなどにも居住。


1.      私(ガブリエラ)の母校であるペンシルバニア大学(PEN)で、心理学を専攻したのち、あなたはグーグル社の新規ベンチャー事業部門に勤務しました。そこで、新規企業のプログラムの実施や新製品開発に関与しました。そのような仕事に5年携わったのち現在の「ハッチ」(Hatch)となる企業を立ち上げました。このようなキャリアは計画したものですか。あるいは、起業家になるという願望が、大学での専攻やグーグルでの経験をきっかけにして、徐々に大きくなったのですか?

明らかに私のキャリアの展開は計画したものではない。グーグルで、自分が初期段階のプロジェクトや製品に興味を示す性格であることを悟った。既存のプロジェクトで前任者の仕事を引き継ぐのではなく、計画図がないようなまったく新規のプロジェクトに携わるのが好きだ。私が持っている起業家精神は、グーグルに影響を受けていると思う。グーグルでの最後のプロジェクトは、世界を視野に入れた起業家支援のためのセンターを立ち上げることだった。そこでは、南アフリカのアクセラレーター(新規企業の立ち上げのための支援組織)からスタートして、通称「キャンパス」と呼ばれるロンドンの中心的な拠点の設立で頂点を極めた。その仕事に携わる過程で、企業を新規に立ち上げ、また、ゼロから事業を構築するような素晴らしい志をもった人々と会うことができた。私は、彼らを通じて「起業家病」に感染したのだと思う。



2.       御社のビジネス・モデルと事業運営について説明してください。具体的に、どのように利益をあげているのですか。サプライチェーンはどのようになっていますか。御社に似ているという意味で、競合企業はどこですか。アマゾンのような大規模な小売企業は脅威だと考えますか。競業他社とどのような点が異なっていますか。競業他社に対して、具体的にどのような競争優位を有していますか。

当社ハッチとはどのような企業か、当社のビジョンは何か、その背景を説明することから始めたい。当社のビジョンは、インタラクティブ(双方向)で、カスタマイズ化されたショピングの経験を中心に展開している。そうしたショッピング経験は、顧客が、自分の嗜好を取り込んだ商品を作り出すために詳細を調整できるというものだ。こうしたアイデアの起源は、次のような自分の認識にもとづいている。すべてのショッピング経験を通して、顧客は、あなたが購入したいと検討する商品に関して、イエスかノーの二者択一の決定をしなければならないということだ。

ハッチは、こうした限界を超越する仕組みを提供している。それを可能にするため、当社は、次のような人々と提携している。工芸品作者、工芸会社、芸術家。こうした人々は、自分たちのデザインに顧客の個性や希望を取り込むことにより、(通常商品に比べ)2倍の差別化(もともとのデザイン性に、顧客の個性・希望を取り込むという意味で)に伴う優位性を生み出している。ハッチで特集される商品のすべてが、顧客の嗜好によって決定される最終商品に向けての出発点になっている。顧客は、その商品に自分の個性を反映させるために、材料、色、サイズ、形を変更することができる。

当社の事業に最も類似した競合企業はどこかという質問に対する一般的な答えを示そう。当社は、あらゆるオンライン販売企業と競争している。なぜなら、顧客がオンラインで買い物をするとき、「私はこのオーダーメイドの商品がほしい」と考えているのではなく、「私はこの商品がほしい。私は、この商品を、私の希望にピッタリ合った商品を提供する企業から購入する」と考えている。そうした意味において、当社は、アマゾン社を含めすべてのオンライン販売企業と競合している。

ミクロ(微視的)の規模では、ハンドメイド商品の総合的なマーケットプレイスであるetsy.com(エッツィー)が評価を得ている。しかし、当社にとって、「ハンドメイド」(手作り)という点は、差別化のポイントになっているのではない。当社の関心は、メーカーが提供できる個性化とオーダーメイド(カスタマイズ)とそのメーカーの質にある。その意味で、当社は、より「精選」されたマーケットプレイスである。当社のサイトで販売が許可される前に、すべての商品は注意深く調査される。当社は、競合他社のサイトでは手に入れることができない商品と顧客エクスペリエンス(経験)を追求している。



3.      御社の組織文化はどのようなものですか?

当社の企業文化は、とても楽しい文化だと表現できる。社員はよく笑う。社員同士は、家族のように親密だ。社員はお互い、純粋に好きだと思っている。ビジネスの多くの課題については、意見が一致せずに議論する場合もあるが、そうしたディスカッションを一緒にやることにも社員は楽しみを見出している。社員全員で、1週間に1度運動し、シェイプアップするという新年に設定した目標を達成するために努力している。数人のメンバーで読書クラブも作って、月に1度集まって、ワインを楽しみながら本について語り合っている。私は、個人的に、当社のチームの各メンバーに親近感をもっている。このチームを構成するメンバーがいなければ、当社は現在のような形になっていなかっただろう。彼ら(社員)は、私や当社にとって素晴らしいチームだ。

当社が成長しても、現在の企業文化を維持したいと思っている。当社の価値観を共有できず、企業文化にうまく適合できず、当社を去らなければならなかった社員もいた。一方、現在在籍する社員たちは、当社のビジョンを信奉してくれている。もちろん、企業は、典型的に成長するにしたがって、官僚化していくものだ。そうした進化(官僚化)は避けることはできない。しかし、地に足がついた現実性、賢明さ、謙虚さ、勤勉さといった中心的な組織文化を維持することは不可能なことではない。



4.      グーグル社のCampus(キャンパス)と他の新規企業を支援することを目指す計画を教えてください。日本、あるいはアジアにおいて、グーグルは新規企業の支援のためにどのようなことを実施していますか。

アジアにおいて、グーグルが新規企業のためにどのような活動を行っているのか、私はよく知らない。私がグーグル社にいたころ、同社には起業活動や新規起業の支援活動を開発するためにアジアを拠点とする社員がいたことは覚えている。しかし、そうした活動が現実化する前に私は退社した。

キャンパス・モデルは、よく知っている。これは、ある都市で、ハブ(拠点)を作り出し、起業をする際に必要となるすべての資源にアクセスできるようにする仕組みだ。同じビルの中で、起業家は、メンター(指導者)を見つけ、作業スペースを確保でき、他の情熱的な起業家と一緒にコミュニティーを形成できる。くわえて、法律問題から会計問題のすべてに関して相談できるサービスも利用できる。ロンドンのキャンパス・モデルは実際にスタートし、そのハブ(拠点)は成功例として評価された。同様のキャンパス・モデルは、(イスラエルの)テルアビブ、チェコ共和国、さらに、正確に思い出せないが、最低もうひとつの都市に存在していたと思う。

グーグルは、新規企業に対してかなりの程度深く関与していると思う。事実、「起業家のためのグーグル」と呼ばれるチームを作った。そのチームは、メアリー・ヒミンクール(Mary Himinkool)に率いられていた。私は、グーグルで彼女と一緒に働いた。聡明な女性だった。そのチームは、米国以外の国で起業活動を発展させることに積極的に関与していた。特に、起業家になることが困難な国の起業家(予備軍)を新規起業の世界に導く手法を検討していた。そうした国では、新規の起業はアメリカほど羨望の眼差しで見られることはない。グーグルのチームは、起業家を、新規企業を立ち上げるという長くて困難な道に導くことを支援する手法の開発に取り組んでいた。特に、技術産業で典型的に不足している創業者の育成に焦点を当てていた。



5.      ハッチを創業し、現在運営していくうえで、あなたは、グーグルで学んだスキル、経営資源、教訓のうちどのような能力・経験を活用していますか?ハッチを創業して以来、どのような教訓を得ていますか?

グーグルは信じられないほど賢明で、優秀で素晴らしい実績をもった人々が集まった企業だが、私が学んだ最も重要な教訓は、ソフト・スキル(対人交渉力)がどれほど重要であるかという点だ。グーグルの社内で個人的に成長し成功することに最も密接に関係している要素は次のものだ。他の社員と関係性を構築すること、チームを率いること。こうしたソフト・スキルは、教科書では決して学ぶことはできない。

私はハッチの運営にあたって、この教訓をしっかり心に留めている。これまでの「小さな勝利」、たとえば、投資家に資金を提供してもらったり、チームを組成したりしたことを考えると、それらは、データや商品ではなく主として人によってもたらされたものだと判断できる。ハッチに参加しているすべての従業員は、入社にあたって給料が減額になっていると思う。当社のすべての社員は、優秀で合理的な人間だ。正直に、そして、透明な方法で他の社員と交流し、同じ目標を共有する。そうした機会が、当社の社員の動機付けになり、当社が達成したすべての実績につながっている。くわえて、グーグルではリーダーシップの多様なスタイルを学ぶ機会も得た。そのため、私は自分のリーダーシップのスタイルを作り上げるために、「いいとこ取り」ができる。

絶対的に何でもできるときに、優先順位をつけなければならない厳格な状況に自分をさらすことほど、有益な経験はない。それがハッチで学んだ教訓だ。その作業は、データと直感との間の絶え間ない戦いのようなものだ。その2つの要素の正しいバランスのための公式は存在しない。したがって、自分自身の公式を研ぎ澄ます必要がある。グーグルでは、もしあなたが何かができない(何かをしない)場合は、その代わりをしてくれる人間が絶対にいる。くわえて、グーグルには、社員が何をしているのかを示す明確な計画図がある。対照的に、ハッチでは、進むべき道は固定されておらず、何でもできる。自分たちがやりたいことに対するビジョンを作成する。それを現実性のある戦術と結びつけ、達成する必要のあるものを決定し、冷静に優先順位を決める。それが、ハッチでの教訓であり、スキルであり、私が次に進むべきときは、これらとともに前進する。



6.      コンピューターのプログラミングとウェッブデザインは、御社のビジネスの中心だと考えられます。運用面でどのような技術的な困難に遭遇しましたか?そうした困難にどのように対応していますか。

創業者として、私は、十分迅速に対応できていると考えたことはない。当社のエンジニアはとても優秀であり、驚くべき業績を生み出している。しかし、当社は、ボリュームがとても多い計画表をもっている。それには、当社が達成したいと思っているおびただしい項目がリスト化されている。したがって、どんなに迅速に当社が対応しているとしても、常に当社のビジネスのスピードは十分ではないと感じている。

ハッチを創業し、投資資金を獲得したとき、当社のすべての指標は「数字」だった。成長を数字で示すことが必要不可欠だった。そうした関心により、考えられるEコマースの手法をすべて実施し、サイト訪問者の顧客転換率を高めるための方策はすべて行った。そうした方策を実施する過程において、当社は、自社の強み(ユニークさ)や競合他社と差別化している微妙な差異を見失うことになった。様々な手法で最適化できた月末は、確かに、収入や顧客転換率は向上した。一方で、ハッチがEコマースの競合他社とどのように差異化されているのかは不明確になっていた。ハッチは、競合他社のサイトと同じようになっていた。

2014年末と今年(2015年)の始めから、次の4半期を使って、自社の本来あるべき姿の土台を構築するための方策を実施することを決定した。その方策には、当社を差異化するための人材や当社の土台のためのデザインも含まれている。当社の創業以来、初めてブランドの構築ということを検討している。それには、デザイン、戦略やマーケティングの実施が含まれている。デザイン、エンジニアリング、戦略の各要素が密接に絡み合っている。



7.      Eコマースにおけるオーダーメイド時代の到来」というあなたのスピーチで、投資家からの垂直的統合のプレッシャーに効果的に対抗したと述べています。その理由は、御社のサイトでの購入の90%が異なった商品カテゴリーを対象にしているというものでした。あなたは明らかにデータに依拠した意思決定をしています。ビッグデータ時代において、あなたは、必要な情報の内容と情報量をどのように決定しますか。そうした情報をどのように集め、分析し、最終的に意思決定のプロセスに反映させますか。

正直に言えば、そうした課題と格闘し続けている。明らかに、私は、多くのデータを検討する。しかし、前述したとおり、企業としての当社の本来の姿を知り、ブランドの柱を決定することが、2015年に入った今、当社にとってとても重要な課題だ。このように、当社は、自社の信じる価値を反映しないような会社になるために、データを最適化するようなリスクは冒さない。データのみを重視するようなリスクを冒せば、企業はビジョンや哲学を反映しないように感じられるかもしれない。この場合、バランスを維持することは、繊細で扱いにくい。顧客が、その企業(あるいは商品)は自分たちが求めているものではないと示唆するとき、自分が考えているアイデアを反映する企業を作り上げる意味はない。そのように起業はできない。しかし、自分の信念や価値観を完全に捨て去れば、最終的に万能サイズの商品を作ることになってしまう。そうした商品は、どんな顧客にとっても高い価値をもつものではない。そして、顧客が自分の個性を見出せるものでもなく、感情的に親近感を感じるものでもないし、顧客がその商品の熱烈な信奉者になるものでもない。私は、現時点で、あなたの質問に対して正確な回答ができない。なぜなら、依然として、正しいバランスが何かを追求している段階だからだ。



8.      女性であることがあなたのビジネスにどのような影響を与えていると思いますか。有利な点は何ですか。また、不利な点は何ですか。

それは、まさに論争を招く質問だ。ある意味で、有利、不利な点は、両刃の剣である。男性の創業者よりも女性の創業者のほうが少ない。最新の統計によれば、女性の創業者はベンチャー資金に依拠した創業者全体の3%にすぎないと思う。一方で、私はマイノリティー(社会的少数者)に属する。ベンチャー企業のなかには、私のような人間や他の女性を探し出すために努力をする企業もある。

ベンチャーキャピタルに対する私の理解から、ビジネスというものは高いレベルで、パターン認識に依存しているという示唆を得ている。もう少し具体的に説明しよう。企業は、過去の成功において観察できた特徴に注意を払う。そして、そうした特徴により将来的な機会の可能性をふるいにかけている。そのような成功の特徴のいくつかは人間に関係しており、投資家は、ある一定の特徴をもった創業者を探している。過去の創業者のほとんどが男性だったことにより、女性の起業家が出現すると、こうしたパターン認識によるアプローチは機能不全に陥ってしまう。

いくつかの論文は、次のことを示唆している。投資家は、男性的な特性をもっている女性の起業家に資金を提供する傾向がある。私はそうした発見は部分的に正しいと思っている。もちろん、それに対して不平をいうつもりもない。当社の場合、ここまで成長できてとても幸運だと思う。ときどき、仕事部屋に私一人しか女性がいないのは不利だと感じることがある。ときに、私は、男性だったら絶対に聞かれないような質問を受ける場合もある。したがって、ベンチャーキャピタルとのミーティングの際には、女性らしい服装は着ない。たとえばスカートやドレスは着用しない。そして、メガネをかける。なぜなら、私の行動(外見を含む)のすべてがビジネス的な洞察力やプロフェッショナル性を伝えるからだ。私がこうした行動をとるのは、部分的ではあるが、友人である女性起業家から聞いた経験に基づいている。

それから、ニューヨークの女性創業者のコミュニティーの親密な文化はプラスの点としてあげられる。事業をスタートし成長させている素晴らしい女性たちと話をする機会をもてる。良い経験と悪い経験に対して、私たちはオープンな態度をとる傾向があり、お互いを助け合うネットワークを構築している。ハッチのチームでは、私は3人の女性と3人の男性と一緒に働いている。



9.      ご存知かもしれませんが、リスク回避的な文化をもつアジア、特に日本では、起業は相対的に少ないです。起業を考えている人、特に、女性に対して、どのような助言をしますか。

これは難しい質問だ。というのは、ある国の文化的な環境に抵抗することは難しいからだ。強力な支援ネットワークにアクセスしやすくなれば、状況は少しばかり改善されるかもしれない。私の助言は、志をもって起業を考えている人は、自分が希望することを実践している人々を探し出し、そうした人たちに「糊」のようにくっついているというものだ。たとえば、無給のインターンシップをやる。実際、私は高校や大学のときにそういうインターンシップをたくさんやった。そして、そうした起業家につきまとう。たとえ、あなたが高校2年生になる前の夏を、こうした起業家にコーヒーを出すことにすべて費やしたとしても、それを薦めたい。あなたがそうなりたいと思う起業家の近くにいることで、どれだけのことを学び、吸収できるか、その経験、知識に驚くことになるだろう。


起業活動をあまり評価しない諸国では、起業家活動を奨励し賞賛するようなサブカルチャーに参加することが大きな違いを生む。それは、実際に起業するか、しないかにかかわらない。さらに、あなたがリスクをとるなら、あなたは自分の計画に固執する可能性が高くなる。なぜなら、あなた自身が、起業という同じ旅で奮闘している人々に囲まれることになるからだ。



2015年9月24日木曜日

2015-09-25 UoPeopleの仮想の大学授業が本物の教育だ。






President Shai Reshef
シャイ・レシェフ

University of the People(人民大学)創業者兼学長。同大学は、世界初の授業料無料のオンライン大学として脚光を浴びている。彼のTEDトークでのスピーチ動画は200万人以上のアクセスを記録し世界的に注目されている。テルアビブ大学卒。ミシガン州立大学大学院修了(中国政治専攻)。彼は、20年以上の国際教育ビジネス業界での輝かしい経歴をもつ。米カリフォルニア州パサディナ在住。





. 個人的なプロフィール、学歴、職歴などを簡単に教えてください。大学院で中国政治を学ばれていますが、その動機は何だったのですか。アジアの政治とあなたの教育への情熱はどのように関係しているのですか。

私は、ミシガン州立大学の中国政治・歴史プログラムで、アジア文化について学んだ。こうした学問が、現在の私の仕事に直接関係しているかどうか定かではない。しかし、中国、特に近代中国の歴史を学ぶことを通じて、人々の行動と努力がどのように物事を変えるのか、強く意識することにつながった。

私は、営利目的の教育業界で20年働いた。他の多くの成果にくわえて、ヨーロッパで最初のオンライン大学を設立した。そのとき、オンライン学習がどのくらいパワフルなものなのかを目撃した。世界中から生徒が参加した。彼らは、家にいながら勉強できた。仕事を続けながら、レベルの高いヨーロッパの教育を受けることができた。同時に、オンラインで学位を取得することは、多くの人たちにとって「希望的な期待」以外の何ものでもないということも悟った。なぜなら、多くの人々にとって、そうしたオンラインプログラムの授業料は高く、それを負担する余裕などなかったからだ。

最終的に、私はその事業を売却し、半分引退生活に入った。直後に、やはり仕事を続けたいと思った。しかし、今までと同じような仕事を続けようとは考えなかった。私は財産もあり恵まれている。したがって、今度は社会にそれを還元するときだ。それを自分が得意な教育の分野で行いたい。教育業界については知り尽くしている。でも、それ以上に重要なことは、人を教育するとき、あなたはその個人の人生を変えることができる。そして、最終的に、人を通じて世界を変えることができる。世界に対して、何かのインパクトを与えたいと思った。そして、それが可能になるのは、教育を通じてのみだと考えた。

周りを見渡すと、私が開発したオンラインプログラムの費用を高くしていたすべての資源が、現在無料で利用できることに気がついた。オープンソースの技術、無料のオンライン資源、そして、人々が情報を共有しあったり、教え合ったあり、情報を公開し合ったりするインターネットの文化。この時点で、私にとって必要なことは、これらの資源をまとめることだと気づいた。その結果が、「The University of the People」(以下、UoPeopleという)だ。



2. 高等教育に対して普遍的なアクセスを提供するというアイデアをどのように発送したのですか。世界は、地球温暖化から飢餓、環境汚染にまでおよぶ多くの問題を抱えていますが、あなたはどうして特に教育問題に関心を持っているのですか。

先ほど述べたように、人々に教育を与えれば、彼・彼女らの人生だけでなく、世界を変えることができる。それが、私が教育に関心を持つ第一の理由である。そして、その分野は私が一番よく知っている分野でもあった。



3. あなたは20091月にUoPeople(直訳:人民大学)をスタートしました。最初の組織はどのようなものでしたか。それ以降、どのように組織は発展しましたか。これから、5年後の姿をどのように予想しますか。より具体的にいえば、どのような指標で成功の程度を評価しますか?

UoPeopleのアイデアは、世界における教育問題に対して真剣に考慮したなかから生まれた。同時に、授業料が無料のオンラインの大学を作り出すために必要な資源が現在利用可能であると自覚したことにも由来する。ドイツのミュンヘンの「ヴェルデ」(Verde)という名称の会議で私はこの大学の創立を発表した。そのとき、私のチームには3人のメンバーが参加していた。ニューヨーク・タイムズ紙はその発表の翌日、UoPeopleの関する記事を掲載した。それに反応して、私のところに何百人もの人々から電子メールが寄せられた。電子メールをくれた人々のなかには、支援を希望する大学教授たちも含まれていた。UoPeopleは、こうした人々を、コース(授業)やインフラの構築のために役員会に受け入れてスタートした。私たちは、当大学の内容や登録方法をPRするためにウェッブサイトを立ち上げた。また、実際に学生を指導するためのポータルサイトも別途整備した。この段階で、世界中の人々がUoPeopleのプロジェクトに関わってくれた。その結果、20096月には、学生入学手続きを開始し、同年9月にはオンラインの授業をスタートした。そこにいたるまで、UoPeopleの創立から9ヶ月しか経過していなかった。大学スタートまでのこうした業務はボランティアによって遂行された。


現在、大学は、少人数の幹部(有給)のもと、3,000名のボランティアによって運営されている。私と同様に総長は無給である。副総長は有給のスタッフだ。学部長はボランティアで、学務を担当する副総長は有給の職員だ。同様に、財務部長は有給だが、CFO(最高財務責任者)はボランティアだ。当大学は、次の2つの理由で、こうした組織を組成している。当大学は多くのボランティアの人々に依存しているため、その人たちの時間を効率的に活用したいという希望をもっている。大学の多くの教授は「お役所仕事」に対応するために多大な時間を浪費している。そのため、当大学は、有給のスタッフを活用して、教授たちの負担を取り除いた。このように、ボランティアの教員は、最も大切な自分たちの「教える」というスキルに集中できる。これが第1の理由だ。第2の理由は、仮に、ボランティアが他の優先事項や理由により職務を継続できない場合に対応するためだ。その場合、適任者を見つけるまで、その仕事を担当できる代役がいることになる。

当大学はすでにいくつかのマイルストーン(里程標)を通過している。現在、170を超える諸国から2,000人以上の学生を受け入れている。それにくわえ、今年、(学位授与ができっる)認可を受けた。この認可は、当大学のプログラムが高品質の教育を提供していることの証拠となる。その結果、学生が卒業後、いい職を見つけやすくなる。同時に、この認可により、学生は他の大学で上位の学位を取得することも可能となる。次に目指している里程標は、財務的なサステナビリティー(持続可能性)を確保することだ。UoPeopleの授業料は無料だが、学生が受験する(修了)試験に関しては100ドル/試験の受験料を支払うことになっている。学士の学位を取得するためには、10年間に40科目の試験に合格しなければならない。試験料を支払うことができない学生には、様々な奨学金を貸与している。なぜなら、当大学の使命には、いかなる学生も金銭的な理由によって学業が遅れないようにすることが含まれているからだ。同時に、大学は試験ごとに100ドルを受領する。その100ドルは学生から直接支払われるか、あるいは奨学金から支払われることになる。もし、2016年までに4,000名の学生の受け入れ目標を達成した場合、当大学は財務的な持続可能性を維持できるようになる。

UNESCO (国際連合教育科学文化機関)によれば、2025年までに、世界で9,800万人を超える個人が大学に進学できない。なぜなら、それに見合う定員に空きがないからだ。UoPeopleは、大学進学が難しい、こうした個人にどのように対応すべきかを示す、ひとつのモデルとなっている。当大学で可能なことは、他の大学でも可能だということを意味する。発展途上国は、教育需要に対応しないままで資源を使ってしまうような、大学(施設を含む)を設立するかわりに、オンライン大学を創設できる。UoPeopleの使命は、この9,800万人の需要に対応することだといってよい。仮に、他の大学や国々がオンライン大学のプロジェクトに参加しない場合、当大学はこの使命を達成するまで成長し続けるだろう。



4. 大学設立以降、カリキュラムはどのように発展してきましたか。コンピューター科学、MBA(経営学修士)、MPA(行政修士)、JD(法学博士)などの大学院、職務大学院課程を提供する計画は現在ありますか?

当大学では、健康科学の学士号の教育課程を創設しようとしている。たとえは、最近のエボラ出血熱の感染拡大を見ると、多くの発展途上国においてこの科目は緊急の必要があることを認識した。このため、健康科学は次の学科になるだろう。さらに修士課程を創設すべき分野について検討しており、近いうちに、修士課程を創設することになるだろう。



5. UoPeopleを創設するまえに、あなたは教育関係の営利企業で働いていました。現在のUoPeopleと比較して、営利と非営利の大きな相違は何だと思いますか。誰もが参加できる高等教育を提供するという使命は、営利型のビジネスモデルのほうが容易に達成できるのではないでしょうか。

UoPeopleは、営利企業と同じように運営されている。当大学は事業計画と事業目標をもち、月次ベースで業績を評価している。日常の業務という点では、他のビジネスとまったく同じ原理で運営されている。私は、営利企業の出身なので、いかなる組織であれ計画と目標が必要だと信じている。もちろん、個人も計画と目標が必要である。そうした計画と目標は綿密かつ定期的に評価される必要がある。

そうしたことを前提として、いくつかの相違点を述べよう。第1に、非営利ということで、そうでなければ絶対不可能のような多くの優秀な人材がUoPeopleを支援してくれている。学長委員会の長は、米ニューヨーク大学の学長である。英国オックスフォード大学の副学長が、米国の教育省長官とともに、同じ学長委員会に参加してくれている。同様に、副学長はコロンビア大学からの人材だ。営利企業だったとしたら、こうした素晴らしい人材から協力を得ることは困難だろう。さらに、UoPeopleは、3,000名のボランティアからも支援を受けている。

一方、仮に営利組織なら資金調達は容易になるだろう。私は非営利モデルを選択した。なぜなら、多くの人々が営利目的の教育に懐疑的だからだ。当大学のアプローチ法はかなり異なっており、(既存の大学制度に対して)破壊的なため、人々はより懐疑的になることを想定していた。人々は、当大学が真剣ではなく、あるいは、たぶん隠れた事業意図があると考える可能性もあった。非営利組織を組成することにより、そうした問題を回避し、正当性を確保できた。それにより人々は支援してくれている。アメリカの営利目的型の大学の現在の状況をみると、そうした組織は批判を受けている。こうした点を考慮すると、私が営利目的の起業家でないこと(当大学が営利を目指す組織でないこと)を喜んでいる。非営利組織であることにより、私は自分の考えが正しいことを主張でき、私の使命をより迅速にそして容易に実現できる立場になった。



6. UoPeopleを創設するうえで、どのようなチャレンジに直面しましたか。それをどのように克服しましたか。

2つのチャレンジに直面した。先ほど述べたとおり、一つ目が資金調達であり、もうひとつが(人々の)懐疑的な態度である。果たして、授業料が無料の大学は、質を保証し、認可を得ることができ、持続可能性を維持して運営できるのか。最近、認可を取得できたことは、こうした障害を克服することに役立つと考えている。



7. あなたの大学の遠隔学習モデルで、どのように学習の指導が行われるのかを紹介してください。MOOCsMassive Online Open Courses = 大規模公開オンライン講座、ムークス)とCoursera(無料オンライン講義サイト、コーセラ)のようなオンライン教育との相違点は何ですか。こうした「競合相手」から、どのようなフィードバックや批評を受けていますか。

当大学は、MOOCsとはかなり性格が異なる。実際、私は、MOOCsの強い支持者である。第1に、実際、MOOCsは知識を世界中に広めるものであり、もちろん賞賛に値する貢献をしている。第2にスタンフォード大学、MIT、ハーバード大学を含む複数の著名大学がMOOCsを提供している。それはオンラインの教育サービスで、オンライン学習の有効性を保証している。私は、MOOCsを本当に評価し、敬意を表したいと思っている。MOOCsはオンライン教育の重要性を提示していると思う。しかし、仮にMOOCsを受講すると、1万人あるいは10万人、さらには20万人の他の受講生を含む「仮想教室」に出席することになる。一方、当大学では、クラスの人数は20名から30名程度である。当大学は「学生」対「学生」の学習メソッド(学生がお互いに教え合い、サポートし合う)を利用している。もちろん、コースは質問に答え、議論を監視する教師によって監督されている。さらに、学生にはその学生に合わせた形で教師から指導を受ける。こうした点が当大学の教授法の重要な要素となっている。

当大学のプログラムの受講生の性格も、MOOCsの典型的な受講生とは異なる。MOOCsCourseraの受講者の80%は既に他の学位を持っている。40%は学部卒である。さらに、修士やそれより高い学位をもっている者も40%いる。そして残りの20%のほとんどが現役の大学生である。MOOCsの受講生は高い学歴をもっているにもかかわらず、登録したコースを実際に完了するものは参加者の5%未満である。

MOOCsは、「持たざる者」に教育機会を与えることに成功していないという批判を受けてきた。MOOCsはむしろ、高等教育を受ける機会を持っていた人々にチャンスを与え、その結果、「持つ者」と「持たざる者」との格差が広がった。さらに先ほど指摘したとおり、高学歴をもっているにもかかわらず、MOOCsの最終的な修了者は5%にも満たない。一方、当大学の学生は、自然災害の被災や地域紛争という極度の困難を経験している。そうした障害にもかかわらず、登録者の95%がコースを修了している。その意味で、UoPeopleは正しい方向に歩んでいると確信している。

くわえて言えば、UoPeopleは、大学であり、オンラインのコースではない。他の大学と同じように、学生は入学を申請し入学許可を受け、カリキュラムに従い、最終試験に合格しなければならない。当大学は学位を授与する。一方、MOOCsは、いうなれば個別の授業である。MOOCsから学位を受けることはできない。当大学の教育モデルは、賞賛を受けることはあるが、批判を受けたことはない。



8. UoPeopleのパートナーには、国連、ニューヨーク大学、マイクロソフト社、ヒューレット・パッカード社などが含まれています。現在、国際的に、このような企業などと取り組んでいる共同プロジェクトがあれば教えてください。

ヒューレット・パカード社は資金とコンピューターを寄付してくれた。また、同社は、インターンシップ・プログラムを開発し、女性向けの奨学金も提供してくれている。当大学で勉強している間、奨学金を受けた女性たちは、同社の社員をメンター(助言者)としてもつ。アフリカでは、マイクロソフト社は、1,000名の学生に奨学金を提供している。これらの学生は、在学中にマイクロソフト技術認定試験を無料で受けることができる。学生は、同社の社員をメンターにもち、インターンシップを完了する。さらに、学生はプログラムを完了後、マイクロソフト社に就職するチャンスも提供される。先ほど述べたとおり、学長委員会の長はニューヨーク大学の人間で、すべての学科長もニューヨーク大学の人間だ。さらに、ニューヨーク大学の多くの教授がボランティアでUoPeopleで教えている。当大学の最優秀学生の何人かは、ニューヨーク大学に編入でき、その場合、全額支給の奨学金を受け取ることができる。



9. 経営管理学科では何名の学生がすでに卒業していますか?コンピューター科学の学科の卒業生の情報を教えてください(平均年齢、年齢範囲、性別、出身地域)。彼らは、どのような組織で働いていますか。

学生の年齢は、18歳〜66歳で、平均年齢は29歳だ。30%が女性、70%が男性だ(この男女比は、将来、バランスがよくなるように変えたいと思っている)。出身地は世界中といってよい。(米国28%、中南米14%、アフリカ33%、アジア10%、残りは欧州、オセアニアなどだ)。職業経験も広範囲のものとなっている。



10. UoPeopleで勉強したい日本人の学生がいるとします。その場合、英語は大きな障害になります。英語が母国語でない学生のために、オンラインの英語の授業を提供する計画はありますか。授業で使う言語を他の言語にも拡大する予定はありますか。

UoPeopleに入学するためには、学生は、TOEFLか類似の試験に合格しなければならない。そうした試験に合格していない学生には、9週間の英語の授業を受講してもらい、本来の授業を受講するための英語試験に合格してもらう。しかし、当大学は英語の言語大学ではない。したがって、英語ができない学生は、入学の申請をする前にどこかで英語を学ばなければならない。将来、経営資源の余裕ができたら、他の言語による授業の指導も検討するだろう。



11. 非営利団体や営利企業を創業したいという志を持っている人にどのようなアドバイスをしますか?両組織の設立に求められるスキルは異なっていますか?

どちらのケースでも、あなたは、やろうとしていることに情熱をもつ必要がある。明確なビジョンが必要だ。そして、あなたのビジネスの中心は何かを理解しなければならない。さらに、中心的ビジネスに関係がない活動で横道にそれることを避けなければならない。そして、最も重要な点は「決してあきらめない」ことだ。組織が非営利だろうが営利だろうが、この仕事は、長いマラソンのようなものだ。何が起ろうが、決してあきらめないことが重要だ。とにかく続けることで、やがて結果が見えてくる。



12. 仕事をしていないときには、どのような趣味を楽しんでいますか。

過去5年間、私は、UoPeopleの運営に深く関与している。この仕事をとても楽しんでいる。実際、もし何をするのが一番楽しいかと問われれば、「自分が今している大学の仕事」と答えるだろう。仕事をしていないときは、新しい人たちと会ったり、読書を楽しんでいる。くわえて、ランニングをすることも好きだ。ランニングは、私の瞑想方法だ。そうした瞑想は、自分の考えを明確にしてくれ、集中するのを助けてくれる。



Kindleを利用されている方に、私の新著が発売されましたので、ご案内いたします。

「楽しいリアルな英会話」によるアメリカ文化理解とTOEIC®受験準備! 」

手頃なワンコインの価格(約500円)で、英語の決まり文句や俗語など教科書では紹介されない本物(リアル)の英会話を楽しみながらアメリカ文化を理解し、同時に、TOEIC®などの試験対策もできる内容となっています。