クチコミ・マーケティングの世界的権威
単独インタビュー特別掲載!
日本企業のエグゼクティブや
ソーシャルメディア担当者 必読!
ハーバード、スタンフォードに並ぶ米東海岸名門ペンシルベニア大学ウォートンスクール
ジョーナ・バーガー博士がソーシャルメディア・マーケティングの最先端を語る!
昨年の12月、本ブログで、「クール・ジャパン」の関連で、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのジョーナ・バーガー(Dr. Jonah Berger)博士の近著『Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版])を紹介しました。その本は、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの両紙でベストセラーになるなど、米国内で大きな反響を巻き起こしました。
今回は、超クールなジョーナ・バーガー博士との単独インタビュー(2014年2月26日インタビュー実施)を掲載しています。御社のマーケティング戦略、SNS戦略を立案するときに役立つのではないかと思います。
ジョーナ博士のインタビューに関するご感想/ご意見があれば、いつでも歓迎しますので、ご遠慮なく私までお伝えください。その場合、適宜、私(ガブリエラ)がジョーナ博士に直接取り次ぎます。お待ちしております。
今や「広告やマーケティングで、ソーシャルメディアを使わないという選択肢はありえない」といわれる時代だ。そうした状況をうけ、クチコミ広告(Word-of-mouth Marketing)やソーシャルメディア・マーケティング(Social Media Marketing)の研究の世界的権威、名門ペンシルベニア大学ウォートンスクールの新進気鋭のマーケティング学者ジョーナ・バーガー博士に、企業がソーシャルメディアで成功するための秘訣をわかりやすく解説してもらった。バーガー博士の近著『Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版])は全米でベストセラーを記録するなど、今、世界が最も注目する30代の若手マーケティング学者だ。彼は、ニューヨーク・タイムズ紙(ウェッブ版)が「24時間」「1週間」「3ケ月」の単位で公表する「最も多くの人々に共有された記事リスト」に着目し、7,000記事を熟読した。その後、すべての記事の内容を肯定的・否定的、感情(畏敬感、悲しみ、不安)、興味、驚き、実用的な価値、文字数、著者の知名度・性別、ウェッブ上の掲載位置などの多様な項目で分類し、統計的な解析を行った。ともすれば、直観的かつイメージ的にとらえられやすい「クチコミ」の要因を、心理学の知見にもとづき科学的に解明しようとする彼のアプローチが今世界的に高く評価されている。その若さで有名学術誌に多数の論文を発表。その学術的知見をもとに、多くの講演活動を実施。コカ・コーラ(Coca-Cola)、グーグル(Google)、サムスン(Samsung)などのグローバル企業にもアドバイスするなどコンサルタントとしても活躍。また、彼は、2011年には、ウォートンスクール内の「アイアン・プロフェッサー」(鉄の教授)賞も受賞するほどの実力と人気を兼ね備えた教育者でもある。
ジョーナ・バーガー博士のプロフィール
Dr. Jonah Berger, Ph.D. 米ペンシルベニア大学ウォートンスクール准教授(専門:マーケティング)。2007年スタンフォード大学経営大学院修了。博士(マーケティング)。2002年スタンフォード大学卒業。近著『Contagious: Why Things Catch on』(Simon & Schuster社、2013年、邦訳『なぜ「あれ」は流行るのか?』[日本経済新聞社出版])はニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルの両紙でベストセラーとなる。The Journal of Consumer Researchなど著名学術誌に多数の論文を発表。ニューヨーク・タイムズ紙、ウォールストリート・ジャーナル紙、ハーバード・ビジネス・レビュー誌などにも多数寄稿。世界的な企業へのコンサルタント、多数の講演会も含め、クチコミ広告、ソーシャルメディア・マーケティングに関して今、世界で最も注目されている学者である。写真はすべて、著者本人の提供。
ウォートンスクールのバーガー博士のウェッブサイト:
https://marketing.wharton.upenn.edu/profile/311/
バーガー博士個人ウェッブサイト: http://jonahberger.com/
<インタビュー>
1.現在の米国のソーシャルメディア・マーケティングの最先端の状況を説明してください。
クチコミ(バイラル)によるマーケティングは、従来型の広告/宣伝よりも「10倍」も効果的だ。現在の消費者は基本的に広告を信じない。なぜなら、従来の広告の背後に企業が何とか商品を売ろうとしている意図を感じとるからだ。でも、消費者は自分の友達のいうことなら信じる。その結果、個人と個人の間のコミュニケーションが消費者の行動に大きな影響をおよぼす。どの映画をみるか。どのレストランに行くか。何を買うか。人々はソーシャルメディアを使って情報を交換し、そうした行動が他の人々の購買行動に強力なインパクトをもたらす。こうした状況から、企業は、広告投資を、従来型の広告から、ソーシャルメディアやオフライン型のクチコミによる広告にシフトするようになってきた。クチコミによる広告手法は、費用が安いだけでなく、消費者の行動に影響を与える点できわめて優れている。私は、そうしたクチコミの原理を応用するように、コカ・コーラ(Coca-Cola)社、グーグル(Google)社、サムスン電子(Samsung)社に助言し、すでにこれらの企業はきわめて大きな成果を手にしている。
2.特に、注目しているソーシャルメディア・マーケティングの成功企業を教えてください。
ソーシャル・メディアで特に成功している企業として、コカ・コーラ(Coca-Cola)社をあげたい。コカ・コーラ社の手法は、信頼がありかつ新鮮で、同社の顧客と「感情/情緒的な関係性」を醸成することに成功している。特筆すべきは、コカ・コーラ社が、単にソーシャルメディアを別の広告手段とみなしているのではなく、「なぜ顧客がソーシャルメディアを利用するのか」「その顧客が情報機器を使ってどのように情報を交換し、他人との関係性を築くのか」を理解していることだ。
3.クチコミ、ソーシャルメディア広告の成功の方程式はありますか?
ソーシャルメディア・マーケティングで成功するかどうかは、顧客の行動パターンを理解できているかどうかに左右される。そもそも、顧客はどうして、情報を共有するのだろうか。多くの企業が、ソーシャルメディアを使った広告をやればそれで十分だと思っている。そして、いろいろな情報提供技術は、単に「テクノロジーの問題」だと考え、それが「戦略の問題」であることに気づいていない。そうした情報技術を効果的に使う方法を理解していなければ、多額の資金が無駄になってしまう。
私の近著『Contagious: Why Things Catch on』のなかでも述べているが、クチコミ宣伝で成功するためには、「6つの原則」を理解することが大切だ。その6つは、科学的な実証研究にもとづくもので、人々が「語り、それを共有したい」と思うようになるための重要な要素だ。私は、英語の頭文字をとって「STEPPS」(ステップス)の原則と名付けた。それが、ソーシャル・カレンシー(Social Currency)、トリガー/きっかけ(Triggers)、感情(Emotion)、露出可能性(Public)、実用的価値(Practical Value)、物語(ストーリー)性(Stories)だ。わたしは、なぜ特定の商品やブランドがクチコミを通じて話題となり、またインターネット上の情報が拡散するのかをテーマとする精緻な学術研究を行って、この6つの原理を導き出した。このSTEPPSの6つの原則に沿いながらクチコミを生むような情報コンテンツ(たとえば動画)を作り出せば、企業なら人気商品を生み出し、個人でも考えや表現で大きな評判を獲得することができると考える。
■「STEPPS」:クチコミ成功のための「バーガーの6つの原則」
① ソーシャル・カレンシー (Social Currency)
社会的な評価・尊敬、他人にカッコいいと思われること、他人に自慢できること
② トリガー (Triggers)
人に何かを思い出させるきっかけ、何かの連想につながっていくもの
③ エモーション(Emotion)
感情や情緒を刺激するようなメッセージ性
④ パブリック(Public)
多くの人に共有してもらえるような露出可能性。たとえば、ある人が身につけているのを見て、それが真似されていくこと
⑤ プラクティカル・バリュー(Practical Value)
情報の実用的な価値、情報受信者にとって意味があるもの、関係があるもの
⑥ ストーリー/物語性 (Stories)
ある情報が共有されていくとき、それを包み込むような物語、ストーリー/ドラマ性
4. STEPPSのなかの「ソーシャル・カレンシー」とはどういう意味ですか?
アップル社のiPhoneを例にとろう。新型モデルが発売されるときはアップルストアの前に長蛇の列ができる。長い列にならんで、やっと新しいiPhoneを手にした顧客は、その直後にどのような行動に出るだろうか。ほとんどの人が、そのiPhoneをゲットした様子を写真に撮り、その写真をすべての友人に配信するに違いない。どうして彼らはそうした行動をとるのだろうか。それは、他の誰よりも早く新型iPhoneを手にしたことで、「自分がカッコいいと他人に思われる」と考えているからだ。他の誰もが持っていない「何か」を最初に手に入れることができれば、それはかなりのステータス・シンボルになる。また、「事情通」として他人から尊敬される。つまり、彼/彼女は、社会的な高い評価、すなわち、ソーシャル・カレンシーを得ることになる。よりカッコ良く見え、他人に自慢できるようになればなるほど、人はその情報や状況を他人に話したくなる。
5. ソーシャル・メディアの未来をどのように考えていますか?今後、企業として、どのような方向に着目すればいいですか?
ソーシャルメディア・マーケティングの将来は、それが、顧客の「インサイト」(Insight)、つまり、「心の奥底にある感情」に働きかけることができるかどうかにかかっている。顧客のインサイトをつかむことができなければ、最終的にその企業は業績悪化に陥ることにになる。残念ながら、現在でも、多くの企業が、ソーシャルメディアを広告の(技術的)一手段とみなしている。こうした企業は、単に広告をYouTubeの動画に載せればそれで仕事は終わったと考えている。しかし、企業が、「そもそも顧客はなぜ情報を共有しそれが大きな話題になっていくのか」を理解しなければ、多額の広告費用を無駄にすることになるだろう。
6.ソーシャルメディアについて、先進国米国からみて、日本企業やマーケターにアドバイスはありますか?
7.日本政府が、クールジャパン戦略として、日本文化を積極的に世界に発信していこうとしていますが、アメリカ市場をターゲットにする場合、ソーシャル・メディアをどのように有効に活用すればいいかアドバイスをください。
たとえば、日本の流行や人気が出た文化的商品が、まず、日本から、アメリカ在住の日本人に伝わり、そこから、アメリカ社会に広がるといった方法が考えられる。たとえば、2012年にアメリカ国内で大反響を巻き起こした韓国のミュージシャン、PSY(サイ)の「カンナムスタイル」はアジアのポップ文化が地理的な国境を乗り越え米国で人気を博した好例だ。YouTubeにアップロードされたカンナムスタイルの動画は世界の何億人もの人々に視聴された。もちろん、そうした状況が起こるためには、まず、数百万人の人々に視聴されなければならい。そのようなクチコミの行動を理解するためには、心理学の知識や発想が重要となってくる。
私は、これまで、世界の多くの企業にアドバイスをしてきた。そうした経験から、各企業は同じような課題を抱えていることがわかった。「どのようしたら、顧客ベースを拡大できるのか」「どのような方法なら、新商品やあたらしい事業に人気が出て話題になるのか」つまり、企業規模、営利、非営利にかかわらず、クチコミがどのよう社会的な影響力をつくりだすのか、そのメカニズムを理解することがとても重要だと考えている。私の経験や知見を、多くの日本企業と「共有」できればと思っている。近い将来、その機会が訪れることを期待している。
(インタビュー実施:2014年2月26日)
“Contagious: Why Things Catch On" by Jonah Berger
http://www.youtube.com/watch?v=yIUTE6t1Qcc
■インタビューの企画/実施/翻訳■
ジョセフ・ガブリエラ Joseph Gabriella(東洋大学法学部 専任講師 博士/MBA/MS)。杉本有造(IES全米大学連盟東京センター講師 博士/MBA)。両者の共著に『「ヴィクトリアズ・シークレット」が全米の女性に愛されるワケ』『エレベーター・スピーチ入門』(いずれも我龍社)があり、ともに研究/教育以外にコンサルタントとしても活躍。
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